バース・ミッション

<ファイナル・ハート続編>   *2007.7.25〜9.15*

〜絶望こそが生まれた理由(わけ)。
そしてそれが使命(バース・ミッション)だった。〜      

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50*永遠の光
 人々が帰り始めても、カリフは立ち尽くしていた。そのカリフのそばに立った者がいた。
 司祭の姿をしたその人は、カリフのそばに寄るとささやいた。
「カリフ様ですね?オーネン司祭がお呼びです。どうぞ、こちらへ。」
 司祭にうながされてカリフは我に返ったようにうなずいて歩み出した。
 司祭宮の扉を入る。
 広間を抜け、噴水のある中庭を囲む回廊を抜け、金属の扉の前に立った。
 司祭は重々しく扉を全身で開けるとカリフを中へ導いた。
 明るい庭から一転して中はまるで真っ暗だった。
 司祭は足取りを緩めることなく奥へ進んで行く。
 ぼうっと白く光る貝殻で出来たような柱が見えてきた。
 その柱に支えられた細い空間をしばらく真直ぐいくと突き当たり、左に曲がる。こころなしか下り坂になった。
 またしばらく行って突き当たると直角に曲がってさらに下って行く。
 もう3度ほど長い暗闇を左に曲がって下ったところに小さな灯火が点っていて、そこにはさらに地下にえんえんと通じるはしごがあった。
 ひとりしか降りられないような狭いはしごを下った。はるか下にやはり灯がともっているのがわかる。
 降り切ったところにまた金属の扉があって、司祭はまた全身を預けるようにそれをゆっくりと押した。
 地下へ、地下へと下ったのに、まるで真昼のような光に目がくらんだ。
 丸天井は高く、白く輝く輝光石で出来ていた。そしてまるで鏡のように澄んだ水がたたえられた池がひろがっていた。
 そこには髪が白く光るようになり、ふくよかな髭をたくわえたオーネンが、たたずんで味わい深く微笑んでいた。
「よく来た。」
 そう言って案内した司祭の方を見た。
「ご苦労であった。」
 カリフに向き合うとイーラウによく似た慈愛に満ちた目をして告げた。
「これから“永遠の光”にまみえる。その前にペキニ創造以来ここに湧き続ける聖水で清めよう。」
 カリフはオーネンの前にひざまずいた。
(“永遠の光”・・イリュが昔語ってくれた。それはいったい?)
 池の向こうは岩場になっていて、削られて造られた石段がある。そこを登り切ったところにまた入り口があった。
 扉が開かれる。
 さらに上へと登る階段が続いていた。らせんになったその階段を昇りながら時折現われる踊り場の窓から、ペキニの街がうつくしく広がっているのが見渡せた。
 登り切ったところに白く半透明な牛牙のような色の扉がある。オーネンは扉の前で聞いたことのない言葉を唱えた。
 扉は羽根のように音もなく開いた。
 円形のその部屋の中央に、円壇があり、グラスでカバーされたそこに金精鳥の卵くらいの大きさに光る金色の光の玉が浮いている。
 正確には縁には虹色がゆらめき、四方に金の光を放射しているそれは一言ではいい表せないものだった。
 あたたかみもあるのにとても涼やかでもあり、その部屋の空気の振動はとてつもなく微細で光に満ち満ちていた。
 カリフの心は震えた。
「こんなに美しいものは見たことがありません。これはいったいなんなのですか?」
「カリフ。これはきみのほんとうの姿だ。」
 カリフは言葉を失った。
「そして世界中の人々の姿でもある。」
「・・・。」
「これは調和を求めるこころ。融合を希求するこころの結晶だ。天から絶えまなくそそがれる髄気にそれが灯って目に見える光となった。わたしはそれを守っている。」
 カリフが顔を上げた。
「そう。イリュもそうだ。」
「イリュのことをご存じなのですか?」
 オーネンはうなずいた。
「イリュは遺跡守になった。自分の使命を背負うために。つらい想いもした。おきてに従って我が子を手放した。」
「我が子を・・。」
「カリフ。」
「はい。」
「イーラウはわたしのところにも来た。」
「えっ?」
「わたしはイーラウと同意見だ。」
「なんのことですか?イーラウの死をご存じなのですか?」
「彼は蒸気となって自ら知らせてくれた。」
 そう言ってオーネンはカリフの肩に手を置いた。
「きみが受け取ったことを未来へ伝えてくれ。」
「それはどういうことですか?」
「学問所の師として。」
 思ってもみないことだった。
「わたしにはなんの学問もありません。それにわたしには闇の過去があります。それは師にはふさわしくない。」
「きみには弓と竜笛がある。そして、師としてふさわしいのはそういうきみだからだ。」
 腑に落ちていないカリフの顔を見つめてオーネンは言った。
「カリフの墓はペキニの墓所の無縁の者の一隅にある。」
 カリフは小さな衝撃を受けた。
「ご存じなのですか?」
「きみのことは開かれた次元を通して知っている。今この世界は時間や空間が分かれた世界だが、同時に存在する開かれた次元には時間も距離もない。すべての情報はいつも至近にある。」
「まるで違う世界へといかれたのですね。」
「そうではない。」
 オーネンは笑った。
「ここにいるのはきみの知るあのオーネンだ。タイラオラ・オーネンとして、役割としてのものの伝え方もあってきみはとまどったかもしれないが、わたしは今も変わらずイーラウの友のナンタラのオーネンであり、きみの友人のオーネンだ。」
 そして目配せした。
「これはイーラウの意見でもある。」
 いたずらっぽい瞳を見せたオーネンにカリフは思わず笑った。
「気が合うのですね、ふたりは。」
「やってくれるか?」
 カリフはイーラウがしていたように自分の内側に深く目を向けると、顔を上げてオーネンに告げた。
「北の峯へと行ってきてもいいですか?わたしには未来と向き合うまだなにかが足りない。」
 オーネンはうなずいた。
「きみの思うようにゆきたまえ。」
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