バース・ミッション

<ファイナル・ハート続編>   *2007.7.25〜9.15*

〜絶望こそが生まれた理由(わけ)。
そしてそれが使命(バース・ミッション)だった。〜      

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6*慟哭
 その晩、カリフはずいぶん遅くに飲んだくれて帰ってきた。
 眠っていたイリュとエナンは扉を閉める大きな音に起こされた。
 様子を見に起きてみると、カリフは扉にもたれて倒れ込むように足を投げ出して座り込んでいた。
「カリフ・・。」
 虚ろな目をして顔を上げたカリフはそばに寄るイリュの大きなおなかに、表情を変えた。
「やめろ・・。産むのはよせ!生まれたってろくなことはない!」
「カリフ。どうしたの?」
「おまえが産むのをやめないなら、オレが終わりにしてやる!」
 そういうと、カリフはふらつきながら立ち上がってイリュを殴った。
「カリフ!やめて!酔ってる!」
 エナンは叫んでカリフにすがった。
「うるせぇ!すっこんでろ!」
 そう言ってエナンを部屋のすみに突き飛ばし、そのまま凄みのある顔をして、イリュに迫っていく。
「イリュ!」
 エナンは部屋にあったカリフの剣を、カリフに向けて構えた。
「やめて!やめないと刺す!」
 カリフは目をぎらぎらさせてエナンの腕をつかんだ。
 揉み合いになった。
 イリュが叫んだ。
「やめてエナン!危ない!」
 低いうめき声が響いた。
 大きな音を立てて倒れたのは・・カリフだった。
「カリフ!」
 エナンは自分の手から血が滴り、真っ赤に染まっているのを見た。
 カリフの胸にカリフの剣が刺さっている。
 イリュは叫んだ。
 エナンは棒立ちになった。
 倒れて動かなくなったカリフを呆然と見下ろした。
 カリフが倒れた床に深紅の血だまりがみるみる広がっていく。

 カリフの息はあっけなく絶えた。

 エナンは泣くことも出来ず凍りついた。
 カリフにすがったイリュはカリフが息を引き取ったことをしばらく呆然と受け止めていたが、エナンの瞳が虚ろに凍るのを見て気丈に耐えた。
 イリュはカリフの瞳を静かに瞑らせた。
 そしてエナンを抱き寄せて声もなく泣いた。
「あなたはわたしとおなかの子を守ろうとしたの。誰も責められないわ。あなたとわたしの哀しみはひとつよ。」
 
 街はずれの道が二股になったところに来た。
 この道を右へ行くとエトナ。左に行くとタスチフだ。
 エナンは振り返った。
 ペキニに来て4年が経とうとしていた。
 今また、どこに行く当てもなく夜明けの道をゆこうとしている。
 イリュが目を離したスキに家を出た。もう二度と会えないだろう。
 エナンはそこで初めて天を仰いで両手で顔をおおった。
「カリフ・・カリフ・・!」
 慟哭はまだ暗い森に響いた。
 12歳くらいになろうかという頃だった。
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