バース・ミッション

<ファイナル・ハート続編>   *2007.7.25〜9.15*

〜絶望こそが生まれた理由(わけ)。
そしてそれが使命(バース・ミッション)だった。〜      

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7*山賊
 歩いても歩いても立ち止まることが出来なかった。まるで地の果てへと向かうようにエナンは何も食べずに歩き続け、二晩経った頃道端に倒れ込むようにして眠り込んだ。
 通りかかった馬車が止まった。
「生きてるのか?」
「だいじょうぶか?」
 南なまりの声がした。
 エナンはぼんやりと目を開いた。
 水をくれた。
「行くとこはあるのか?食べるか?」
 そういって親切にマムをくれた。
「オレたちは峠を越えて南に帰る。そっちへ行くんなら乗せてってやるぞ。そこに寝てるわけにもいかないだろう?」
 エナンはうなずいた。
「名前は?」
「・・。」
 名を告げる気力もなかった。
 ふたりの男は聞くのをあきらめてエナンを馬車に乗せると、馬に鞭をふるった。
 疲れ果てたエナンはすぐに眠り込んだ。

 山道で陽はとっぷりと暮れ、男たちは焚き火を焚いて酒を飲んだ。
 声を低くして話していたが、エナンはある言葉に反応して目を覚ました。
「・・あんなで売れるか?口がきけるかもわからないぜ。」
「もうちょっと食べ物をやって精がついてきたら口をきくかもしれねえじゃねぇか。別に少々おつむが足りなくたって馬と同じで五体満足なら働き口はいくらでもある。」
「まあ、そういうこった。」
 そう言って笑い合った。
 エナンは身を起した。
(人買いだ・・。)
 しゃべっている男たちに気づかれないよう、馬車の後ろからそっと降りた。
 逃げようとして枝を踏んだ。
「誰だ?」
 男に気づかれた。
「待て!この野郎!逃げる気だな?」
 もうひとりの男がさっきまでの優しそうな仮面を脱ぎ捨てて恐ろしい顔をしてエナンに迫って来た。
 その時、突然焚き火のところから悲鳴があがった。焚き火のところにいた男が断末魔の形相をして倒れこもうとしていた。
 その後ろにはいつの間に忍び寄ったのか、覆面をした5、6人の男が炎に剣を光らせてまるで闇のように林立していた。
 エナンの腕をつかんでいた男はあわてて叫んで逃げようとした。
「山賊だ!」
 一瞬にして男はエナンの目の前で一振りで山賊に切って捨てられた。
 男を切った山賊が、立ちすくんで硬直しているエナンの腕をつかんだ。
 その後ろの男がエナンに言う。
「オレたちと行くか?見込みがあるようなら使ってやる。いやならアドの剣の餌食になれ。」
「・・。」
 答えないエナンを見て、ひんやりした目を持つその男はエナンを無視して仲間に指図した。
「荷を運べ。」
「ちっ。たいしてねぇなぁ。」
「馬車ごと持ってけ。」
 エナンの腕をつかんでいた男が剣を振りかざした。
「・・行く。」
 エナンはやっと声を出した。
 頭目らしき男はエナンを振り向くと、
「さっさとしろ。」
 とだけ言って馬に乗った。
 奪った馬車ごと根城にもどった男たちは、荷から酒を取り出すと、さっそく酒盛りを始めた。
 エナンは空腹のあまり馬車の中で座り込んだまま半分意識を失っていた。
 横っつらをはたかれて目を覚まさせられた。
「ほら、喰え。ちゃんと喰って働けよ!」
 太ったヒゲをはやした男が、こげたマムと焚き火で焼いた何かの肉をエナンの顔の前に突き出していた。
 エナンはそれを受け取ると、ぼそり・・ぼそりと口にし始めた。
「切っちまえばよかったのよ。」
 誰かが言う。
「アキシモのかわりだ。その方がおまえも都合がいいんじゃないのか?」
 頭目の声がした。
「あいつも飯を作るのがうまくなかったが、おまえのはもっとひどい。」
 別の男が野次って、男たちは笑った。
「小僧より、どっかで女を拾ってくりゃいいじゃねえか。」
 頭目が鼻で笑った。
「女を連れてるとすぐに仲間割れする。そうだろ?それでアキシモをおまえが殺ったんじゃないか。もう仲間を殺るなよ。3人目だ。今度やったらオレがおまえを殺す。」
 エナンは口にしようとした肉を持っていた手を降ろした。食欲が萎えてしまった。マムだけを押し込むように飲み込んで、横になった。

 陽が高くなって、叩き起こされた。
「おまえ、飯が作れるか?」
 エナンはうなずくと、鉛のように重いからだに鞭打って川へ水を汲みにいった。
 夕べの残りの肉を塩と発酵酒で煮てスウプを作った。
 太ったヒゲの男が味見して、うなずいた。
「食えるじゃねえか。おい、めしだ!」
 酔いつぶれた男たちに声をかけた。
 頬のこけた若い男が聞いた。
「小僧、名はなんという?」
「・・・。」
「名がないのか?忘れたのか?・・じゃ、アキシモにするか?」
 目をぎらぎらさせて若い男は低い声で笑った。
「・・。」
「決まりだ。アキシモ。」
「名がないならつけてやる。」
 頭目が低く揺るぎない声で若い男を制した。
「ハザン(名無し)だ。飯が終わったら馬の世話をしとけ。」
 若い男に向かって言った。
「デズ。ようやくおまえの飯を食わなくてすむな。」
「エロー・・。」
 デズは少し面白くなさそうにフンと言って離れていった。
「あいつは酒の飲み過ぎだ。しまいに使い物にならなくなるぜ。」
 太ったヒゲがエローにささやいた。
「おまえは食い過ぎだ。コギ。馬が走らなくなるぞ。」
 コギは品悪く笑った。
 もうひとりはほとんど口を開かずにいるソン。何を考えているのかわからない。エローと同じくらいひんやりとした目をしている。
 あとはアド。この男も鋭い目をしていて眉間に大きな傷があった。この男が人買いを一振りで切り捨てた。
 カリフもまっとうとは言えなかったが、この男たちは人を買うどころか、人を殺すことをなんとも思っていない連中だった。
 エナンは今日生きるために心を殺した。
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