バース・ミッション

<ファイナル・ハート続編>   *2007.7.25〜9.15*

〜絶望こそが生まれた理由(わけ)。
そしてそれが使命(バース・ミッション)だった。〜      

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8*エナンの死
 何日かに一度、連中は山を通るものを襲い、物やいのちを奪う。
 特にデズやコギやアドは、まるで物を奪うよりもいのちを奪う方に自分たちの心を奪われているかのようだった。
 気まぐれにエナンを助けたが、時には子供に手をかけることもあった。
 エナンはコギに尋ねた。
「どうして人を殺す?脅せば荷を置いて逃げるじゃないか?」
「どうして?おまえはどうしておまんまを食う?」
「生きていけないからだろう?」
「それと同じだ。俺達にとっちゃ、それが生きるってことだ。」
「どうして?」
「すかっとするのよ。」
 エナンは言葉を失った。
「面倒なことを言うと殺すぞ。おまえもやってみりゃあ、わかる。」
「オレはすかっとなんかしない!オレは!」
「おまえも人を殺したことがあるだろう。」
 エローの声がした。
「目をみりゃわかる。オレと同じ目だ。オレは10歳で人を殺した。だからオレはおまえが使えると思った。2人目、3人目になれば慣れる」
 エナンはエローの見透かすような目を見てぞっとした。
 その晩、エナンはうなされた。カリフの最後の顔とイリュの叫び声を夢に見て、冷たい汗をかいて飛び起きた。
(オレはエロー達と同じ目をして人殺しをすることでしか生きていけない人間になるのか?)
 肘がかすかに震えていた。両手でそれを抑えるように自分を抱き締め続けた。
(いやだ!カリフ!・・殺したくなかったんだ・・。)

 今日も山に悲鳴があがった。
 聞き慣れていくことが恐ろしかった。やがてそれも恐くなくなっていくことがなによりも恐ろしかった。
 家族だった。父親と母親は殺され、小さな娘が残された。
 コギとデズがニヤリとエナンを振り返った。
「そろそろおまえがやる番だ。子うさぎならおまえの獲物にちょうどいいだろう?」
 泣いている小さな歩き出したばかりのような女の子を前にして、エナンは蒼白になった。
「わけもない。狩りだと思えばなんのこたぁない。」
 渡された小刀を持つ手がわなわなと震えた。
 男たちは笑いながら見ている。
「どうした?手が震えてるぜ、ハザン。」
 キンと張った糸が切れた。
 エナンは小刀を投げ捨てると頭を抱えて叫んだ。
「わあーーーっっ!!」
 男たちはエナンの形相を見て一瞬黙った。
「気が狂いやがったか?」
「ハザン。肝がねえな。やらねえのか?」
「オレはハザンじゃない!もうたくさんだ!」
 そう言って森へ駆け込んだ。
「待て!ちきしょう。追え!」
 エナンはそれこそ気が狂ったように駆けた。
 だが、追って来るのは屈強な男ばかり5人だ。中でも足の速いソンにすぐに追いつかれた。
 首根っこを掴まれた。
「オレはカリフだ!オレはオレが殺したカリフとして死ぬ!もうたくさんだ!殺したくない!」
 ソンは表情を変えなかった。
 だが、その冷えきった瞳の奥に、何かが揺れた。
 すばやくエナンの肩口に剣を滑らせて血をにじませると、
「死んだふりをしろ。」
 とだけ言ってエナンを地面に突き飛ばした。
 男たちが追いついた。
「おまえの足にはかなわねえな。先を越されたか。」
「もう済んだ。」
 口数少なくソンがそう言うと、アドやコギは「ちっ。」と舌を鳴らしながらさっきしとめた獲物の方へともどっていった。
 デズは憎々し気にエナンを蹴り上げると、ソンやエローの顔をふてぶてしく白目で見上げ、そうしてもどっていった。
 エローは何も言わなかった。
 しばらくソンとエナンを見つめていたが、ゆっくりときびすを返した。
「南に向かえ。昼の太陽の方だ。」
 それだけ低い声で告げるとソンももどっていった。
 
 なんの気配もなくなって、エナンはゆっくりと起き上がった。
 肩の傷はじんじんとうずいたが、ほとんど口を聞いたことがなかったソンの沈んだ声が頭に響いていた。
(・・カリフ。オレはカリフとして生きてく。もうエナンは死んだ。今日からカリフだ。それしかカリフにオレができることはないんだ・・。)
 月明かりの下、道なき道を下った。
 沢に出て、水を飲んだ。
 小さな女の子の顔が浮かんで、吐き気がして涙がにじんだ。
 泣きながら沢沿いに山を下った。
 ソンが言った通り南に向かった。
 そこにはタスチフという街が開けている。
 ペキニの次に大きい街だった。
 海に近い。
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